ここ数年で「働き方改革」という言葉が様々な場面で使われるようになり、社会人一人ひとりのワークライフバランスへの意識は格段に高まってきています。この働き方改革の発端となったと言われるのが広告代理店業界です。
今回は、その業界で国内第2位の規模を誇る博報堂について、実際の残業事情や、業務環境改善のための具体的な施策内容ついて紹介したいと思います。 |
目次
株式会社博報堂の残業にまつわるデータ
2015年の電通の過労死事件や、2019年4月から施行された「働き方改革法案」を経て、広告業界を取り巻く労働環境も非常に大きく変化しています。
広告業界国内第2位の規模を誇る株式会社博報堂では、実際に具体的な働き方改革を進めており、一定の成果も見えてきています。
まず、電通の事件を受けて過労への批判が世論として巻き起こった際には、
- 22時以降の残業に対して、事前に上長に相談し承認を取ることが義務付けられた
- 社内に業務効率化を呼びかけるポスターが掲示された
- 深夜には帰宅を促す社内放送が流れるようになった
こうした変化がありました。
ただ、このように具体的な環境の変化はあったものの、社員の勤務時間に大きな改善が見られたとは言いがたく、また部署によって働き方改革への意識はまちまちで、上記のような対策も徐々に形骸化していました。
しかし2019年の4月、「働き方改革法案」が施行され、現在はこれを機により力を入れた対策が行われています。公式の企業情報にも、
楽しく働くためには、「作業時間」「待ち時間」をできるだけ減らし、提案・チャレンジのための「創造的な時間」を十分に取ることが必要」
と明記されており、さらに
と記載されています。
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筆者の実際の残業時間
私が在籍していたのは2018年までなので「働き方改革法案」が施行される前でしたが、それでも前述の電通の過労死事件が明るみに出た際は社内でも大きな問題となりました。競合社の出来事ではありつつも、同じ広告業界。過労に関しては、社員のほとんどの人間が問題意識を持っていたはずなので、決して対岸の火事とは思えなかったのだと思います。
私は当時、入社して2年が経つころでした。営業職として2つのクライアントをメインで任せてもらい始めた頃で、毎日非常に忙しく、月の残業が120時間ほどでした。クライアントの働き方も当時の博報堂と似ていて、深夜までお互いにメールや電話が常時通じる状況。クライアントからの突然の依頼も多く、深夜に資料などを依頼されそれを翌朝に納品する、というスケジュールが続いていました。
しかし、電通の事件を受け状況は変わりました。世論の雰囲気を受け「可能な限り早く帰る」という意識が高まったこともありますが、私が置かれていた環境で言えば、クライアントサイドの代理店への依頼のスタンスが改善されたことが最も大きかったです。
短納期での依頼は避けるようになったり、深夜の電話は避けるよう努めてくれました。
私の残業時間も、月100時間に到達するかしないか、というくらいには改善されました。とは言え、帰宅は連日0時頃。電車がある時間に帰れるだけでも大きかったのですが、会社が理想とし呼びかけている22時完全退社には程遠い現実でした。
よく言われていることですが、労働環境を変えようという取り組みがあっても、個人が抱えているタスクの量が大幅にカットされない限り、拘束時間は改善されません。効率化という意味での時間への意識は高まったものの、実際の業務量は、少し減ったところでやはり相当に多く、それなのに残業していると責められる感じがする、という状況でした。
働き方改革を率先して導入しようとした博報堂の姿勢は素晴らしいと感じつつも、上記のようなしがらみがあり、残業中の居心地が悪くなったように感じたのも事実です。
私が退社してからは、「働き方改革法案」で国規模での統制が始まりました。残業時間への取り決めも厳格化し、当然博報堂もそれに準じた労働規則に変更をしています。
具体的には、
- 今まで毎月100時間申告できた残業時間が上限60時間になった
- 月1日は有給を取るように呼びかけられるようになった
などです。
このような具体的な施策については後ほど記載いたしますが、状況はこの4月から非常に大きく変化しています。
在籍中の社員も、帰宅しやすくなったという話をよくしています。ただ一方で、部署によってはまだまだ働き方改革が導入されず「上司より先に帰るな」というような古風な常識のままであったり、繁忙期に60時間以上の残業になることがあっても申告できないので実質サービス残業になってしまったり、という悲痛な声も聞かれています。
博報堂の残業代について
博報堂の正社員は4年目から裁量労働になります。年次や実績に伴って給与レベルが決まるので、残業代という概念はなくなります。一方で4年目になるまでは時間管理労働性です。そのため、残業時間の申告制限が100時間から60時間になった影響を最も受けているのはこの世代と言えます。
残業代については、申告した分はきっちりと支払われます。但し前述のように、実際には60時間以上働いていても申告できていない、という状況は珍しくないようです。その意味では、「未払い」と同様の状況になっていると言えるかもしれません。
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博報堂の残業に対する考え方
残業に対する社風は、この5年ほどで非常に大きく変わったと思います。広告業界といえば体育会系をイメージされることが多いかもしれませんが、博報堂も少なからずその文化がありました。もちろん部署の雰囲気によりますが、例えば「上司の呼び出しなら何時でもどこでも飛んでいく」「早朝に出社してフロアの掃除を完璧にする」「飲み会は朝まで付き合う」「自分の仕事が終わっていても上司が帰るまで帰らない」など、社内の上下関係に基づく悪しき文化はあったように思います。
現在は、基本的にはそうした文化は「古い時代のもの」という認識に変わっています。プライベートを重視する人も多く、また子育てを率先して取り組んでいる男性の社員も多くいます。「残業しない」という姿勢は歓迎されるべきものとして認識されていて、それを受け入れない側を「古い」と糾弾するような雰囲気さえ出てきているように感じます。
ただ、これは難しいことなのですが、プライベートより仕事優先という人間の方が動きが早く、クライアントから歓迎されるということはよくあります。実績や評価という面では、どうしても仕事最優先の人が高評価を受けることになるので、社風というよりはその意味で残業をしている人が多いように思います。
残業に対する取り組み、変わってきていること
前述いたしましたが、株式会社博報堂は具体的に実施し、改善に向けての歩みを進めています。ここでは、その具体的な内容を下記の箇条書きにて紹介します。
- 残業時間管理制の社員への残業規制(基本的に月上限60時間)
- 月1日は年次有給休暇を取得することの促進
- 19時以降は打ち合わせを極力設定しないようにする呼びかけ
- 平日22時以降と休日の業務関連の連絡を避けるよう呼びかけ
- パソコン上の単純作業のロボットプログラム代替への整備
- ビジネスインテリジェントツールの導入による作業の効率化
- サテライトオフィスやシェアオフィスの拡充
- モバイルPCやスマートフォンの配布、社内 PCと同様の環境で社外でも作業ができるシステムの整備による、テレワークの充実
- タイムマネジメント意識を持つことを目的とした「勤怠システム」の導入
- 効率的な企画書作成に便利なツールを集めた「企画書作成支援ツール」の提供
上記のような具体的な対策を取り込むことで、実際の「働きやすさ」の創出に尽力しているのです。
博報堂の残業への意識は変わってきている!
ここまで、博報堂の残業事情について最新の情報を紹介しました。電通過労死事件の発覚と、働き方改革法案の施行で、大きく状況が変わっているのが事実です。
具体的な取り組みもなされていて、社員一人ひとりがその変化を実感できるレベルには達していると思います。
この意識が途切れることなく、さらなる状況改善につながっていくことを私も期待しています。
この記事のまとめ
☑「働き方改革法案」施行後、労働環境改善により力を入れた対策が行われている
☑博報堂の正社員は4年目から裁量労働になり残業代という概念がなくなる
☑残業に対する社風は変わってきている
筆者:ルン(ペンネーム)
経歴:出版業界、広告業界を経験したのち、2018年よりフリーライターとして活動中。
今回書いた企業との関係性:営業職として4年間在籍。
博報堂へ転職するには
博報堂への転職を実現する上で大切なポイントは、転職エージェントの利用です。転職エージェントならどこでも良いわけではなく、博報堂の内定実績を豊富に持つエージェントに相談するようにしましょう。 内定実績が豊富なエージェントは採用ターゲットを熟知していますし、過去の面接内容や面接官の情報に基づいた面接対策をしてくれるので内定確度が上がります。